ベトナムで労働契約を作成・締結する際には、現地の法令や政令に従う必要があります。本記事では、労働契約の基礎知識、契約書に含まれるべき主要項目、及び試用契約を含む契約締結時の注意点について詳しく解説します。
▼目次
1. ベトナムの労働契約の種類
ベトナムの現行労働法（労働法 45/2019/QH14）では、以下の2種類の労働契約が規定されています。
無期限労働契約: 契約期間を明記しない契約。
有期限労働契約: 契約開始日から36か月以内の期限を定める契約。有期限労働契約の更新回数は1回までとされており、2回目以降は無期限契約のみ締結可能です。
2. 労働契約の形式と記載内容
労働契約は、以下の形式および内容を満たす必要があります。
契約の形式
書面形式: 基本的に労働契約は書面で作成し、双方が1部ずつ保管します。
電子形式: 労働法改正（45/2019/QH14）により、電子的契約が正式に認められました。ただし、口頭契約が認められるのは1か月未満の短期契約に限られます。
契約に含まれるべき主要項目
労働法23条に基づき、以下の項目を記載する必要があります。
雇用主の情報: 企業名、所在地、法的代表者の氏名と職位。
労働者の情報: 氏名、生年月日、性別、居住地、身分証明書や旅券番号。
職務内容と勤務地: 業務の具体的内容と勤務地。
契約期間: 契約の開始日と終了日。
給与条件: 賃金額、支払い方法、支払期日、手当等。
労働保護設備: 被雇用者の安全確保のための設備や物資。
昇給・昇進条件: キャリア形成のための制度。
社会保険・医療保険: 保険制度の適用状況。
3. 試用契約について
労働契約締結の前段階として、試用契約を締結することが可能です。試用契約に関しては以下の点に注意してください。
試用期間
試用期間の上限は職位に応じて以下の通り定められています。
管理職: 最大180日
専門技術職（短大卒以上）: 最大60日
技能職・職業訓練職: 最大30日
試用期間の給与
試用期間中の給与は、正式給与額の85%以上である必要があります。試用期間終了後、正式な労働契約を締結する場合、試用契約も1回の更新にカウントされるため、留意が必要です。
4. 有期限労働契約の満了時の留意点
労働契約が満了した場合、雇用主は以下の対応を選択できます。
新たな契約を締結する: 有期限労働契約の更新を行う場合、満了日から30日以内に新契約を締結する必要があります。更新回数は1回までに制限されています。
契約を終了する: 契約終了後、労働者に書面で通知を行い、未払い給与、退職金、未消化の年次有給休暇に相当する金額を速やかに支払う必要があります。
5. 特例措置
以下の場合には特別な対応が求められます。
女性労働者: 妊娠中または12か月未満の子供を養育している場合、新契約締結の優先措置が推奨されます。
労働者代表組織の役員: 任期満了までは契約を終了できません。
6. 労働時間と時間外労働
ベトナムの通常労働時間は以下の通り規定されています。
1日8時間、週48時間以内。
時間外労働は月40時間、年間200時間が上限（例外として年間300時間まで延長可）。
特に妊婦や未成年者など、一定の条件下にある労働者には時間外労働の制限が適用されます。
まとめ
ベトナムでの労働契約は、雇用主と労働者の権利・義務を明確に定める重要な文書です。法令や政令を十分に理解し、適切な契約を締結することで、労働関係を円滑に進めることができます。
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